まんがの力―日本の20世紀と麻生豊-


現在、マンガは日本が世界に誇る文化として認識されていますが、明治から大正にかけての草創期、世の中を風刺するマンガが数多く描かれ、物語性のあるマンガ作品も登場し、次第に大衆の娯楽として認識されるようになっていました。

麻生豊は、その草創期に活躍した漫画家です。

関東大震災後の世の中を明るくするために描かれた代表作『ノンキナトウサン』はそんな時代に誕生しました。コマ割、ふきだしといった現代に通じる表現スタイルが見られるこの作品は、日本の4コマ漫画の原点ともいわれ、映画化されたりキャラクターグッズが誕生したりと大変な評判となりました。

麻生豊の他の作品も、その多くは世相や政治などを題材にしたもので、社会に対する風刺、批判的な視点が貫かれています。日本のマンガ草創期において、マンガが世の中に対し大きな影響力があるメディアであることを、麻生豊の作品は示したといえます。

『ノンキナトウサン』―復興のシンボルー

『ノンキナトウサン』
大分県立歴史博物館蔵

大正12年(1923年)9月1日に関東地方を襲った関東大震災。10万人を超える死者・行方不明者、30万棟以上の全壊・焼失家屋を出し、多くの被災者を生み出しました。

麻生豊の代表作『ノンキナトウサン』は、この震災被災者を何とか元気づけようという目的で新聞連載が始められました。主人公トウサンは一躍人気者となり、被災者だけではなく、数多くの人々に元気を与えました。

トウサンはその後、昭和初めの大恐慌や終戦直後など厳しい時代によみがえり、人々を勇気付けました。

丸顔で団子鼻に眼鏡をかけた、少し頼りないトウサンが、相棒の「隣の大将」とともにさまざまな騒動を繰り広げます。失業をくり返しながらも陽気に生きる彼らの姿は、震災後の厳しい状況下に置かれた人々を勇気づけました。